このストーリーは70%くらい実話ですが、登場人物名などは仮名(架空)であり、実在のものとは関係ありません。
私が結香という女に出会ったのは2月の上旬の頃である。大阪でも寒い冬が続き、私の部屋の窓から少し雪が降っているのが見えた。大阪は雪があまり降らないので雪が降ると何か嬉しい気持ちになってしまう。私が子供の頃は朝起きて雪が積もっていると、それはもう嬉しくてたまらなく学校に行くことが嫌になるぐらい雪で遊びたかったものだった。しかし学校の授業が終わって帰宅する頃にはもう雪が溶けてしまって雪で遊べなくて残念な気持ちにさせられたのは何度もある。
昨年より私はその麻雀サイトで真子という女と出会っていた。真子は麻雀サイトでよく見かけては一緒にすることもあったが、会話といえば「よろしく」という言葉を交わす程度で話をすることもなかった。つまりお互いに名前だけは知っていたという感じであっただろう。ところがある日、ついに真子と話す機会があったのだ。それは私が真子と一緒に麻雀をしている時に役満という珍しいあがり方をしたからだった。真子は「ちょっとスクリーンショットを撮るから待ってね」と言って、その画像をパソコンに保存したようだった。私はスクリーンショットを撮らなかったのだが、真子は「撮った画像をメールで送るからメールアドレスを教えてほしい」と言ってきた。これが真子との会話のはじまりだった。話を聞くと真子は麻雀サイトで話をすることも少なければ、リアルで男性と会話するのも苦手らしい。その話をきっかけに真子と一緒に麻雀をする時には必ず話をするようになってきた。特にお互い深い話をする事もなかったのだが、世間話や出来事など軽い話をするようになってきた。また一緒に麻雀をする機会も増えてきたのである。
そんな2月の上旬の事であった。真子は友達を麻雀サイトに呼んだらしく3人で一緒に打ちたいと言ってきた。その友達というのが結香という女性であった。チャットでの会話であったが結香は「はじめまして」と挨拶してきた。真子とはリアルな友達ではないらしいが麻雀サイト以外でのチャット友達のようだ。ただ、何のチャットサイトであるかは秘密のようだった。私はその秘密のチャットについて興味もなかったでそれ以上は追求しなかった。そして3人で2時間ほど麻雀をしながらチャットで話をしていた。その時は特に結香との話が多かった記憶がある。麻雀が終わる頃、結香は「今日はすごく楽しかった。また一緒にしたい」 と言ってきた。麻雀サイトでは直接連絡のやりとりができないので、私は直接連絡が取りあえるメッセンジャーの存在を真子と結香に教えた。そのメッセンジャーとは今でいう通信アプリのことである。2人とも「こんな便利なソフトがあったんだ」と喜んでいたようだった。2人はそのメッセンジャーをインストールしたので、3人でアドレス交換をおこなった。
それ以来、私は麻雀サイトでも話をしていたが、結香とメッセンジャーで話をする事が多くなった。当然に真子とも話をすることがあったのだが、結香とは気が合ったのか、次第に熱く語り合ったり深い話をするようになってきた。そんな結香との話が続き3月も下旬になった頃、お互いにうち解けるようになってきた。そんなある日、結香がついにある事を私に打ち明けたのだ。結香は私のことを「不思議な人」だと言う。どうやら結香もリアルで男性と話すのが苦手だったようだが、私となら自然に話せて楽しいらしい。そして結香は「嫌われるかもしれないけど、同性愛に目覚めている」と私に打ち明けた。男性と付き合った経験もあればデートもしたことあったようだが、どうやら結香は男性とどう接していいかわからなかったらしい。そんな結香は女子高に通っていたらしいが、高校2年生のある日、女子高の先輩から告白されてキスまでされたようだ。その後、その先輩の言いなりになって肉体関係まで発展していたようだ。ところが、結局別れてしまうことになる。最近になってその先輩は男性と結婚したらしい。先輩からときどき連絡はくるようだが「男もいいよ」と言ってるようだ。このことは絶対に誰にも言わないという私との約束で結香は自分の同性愛について全て話した。
私は結香に恋愛感情を抱いていたわけではないので、結香の同性愛については気にはならなかった。むしろまた私の悪い癖がでて、同性愛者の結香とはどんな心の持ち主だろうと興味を持ってしまった。結香は私をかなり信用してくれたようで、自分の写真を見せてくれたり、電話番号まで教えてくれた。結香の写真を見た印象は童顔で瞳はまさに純粋さが表情に出ているような感じだった。そして、私はときどき結香に電話をして話をするようにもなった。ところが、この結香に対する私の興味や好奇心が後々とんでもない事を引き起こすことになる。
そんな結香との関係が続いていたある日、久留美という23歳で事務系の仕事をしている女性に話があると麻雀サイトで呼び出された。久留美ははときどき、麻雀サイトで私や結香が麻雀をしているところに観戦という形で入ってきて話をしていた。私とはあまり話をすることがなく、真子や結香と話をしていた。その日、私は1人で他のメンバーと麻雀していた時に久留美に呼び出されたのだ。そして、久留美に呼び出された場所は、とある個室のパスワード型のチャットであった。今までほとんど会話がなかった久留美が私に何の話があるんだろうと思いながら、その個室チャットへ入室した。
私は話が何なのか聞いてみた。すると「あなたは当然、男性よね?」と久留美が質問してきた。当然のような質問だったが「そうだよ」と答えると「結香と仲がいいみたいだけど、あなたは結香のことをどう思ってるの?」と聞いてきた。私は仲の良い友達関係と答えた。すると久留美は「最近、結香があなたのことを楽しいとか信用できる男の人だって話をするのよ」と言ってきた。それは私にとって嬉しいことであったが、少し間があいて久留美に怒りがこもってきた感じがした。 ここだけの話ということを約束に久留美は結香と同性愛の関係であると打ち明けてきた。続けて久留美は「今後、結香に近づかないでほしい」、「私達は真剣に愛し合ってるんだから邪魔しないでほしい」と言うのだ。私は邪魔しているつもりもなければ、結香に恋愛感情もない、それを伝えると「男嫌いな私が愛する人から男の話をされると気分が悪い」と久留美は言ってきた。同性愛について詳しいことはわからないが、男嫌いで気分が悪いというのはわかる気もした。しかし私は「それは久留美さんの勝手な気持ちじゃないか」と言い返した。結香が私と話していて楽しいという気持ちがあるなら、それは関係のないことだと思ったからだ。
また少し間があいた・・・
私は久留美の入力ミスや必死に文字を打っていることを、画面の向こう側で感じていた。かなり激怒しているように感じた。そして久留美は「男性が大嫌い」、「今も話してるだけで嫌な気分」、「男性は汚い生き物でしか見えない」と言ってきた。汚い生き物という言い方はどうかと思ったが「私と結香が話をすることを久留美が拒否する権利はどこにもない」と言った。さらに久留美は「あなたに何がわかるのよ?」、「結香がその汚い生き物と話してると思うだけでも嫌」、「私達は愛し合ってるから男性は邪魔」だと言う。私はここでおかしな感覚になった。同性同士でこの話をしているのならまだしも、私は男性であり、久留美は女性である。その男女が結香という女性の取り合いのようになってるのだ。私は言葉に詰まったが結香に恋愛感情はないと強く否定し続けた。しかし私という男性と接触している結香が汚しているというのが久留美の主張らしい。話がどうも噛み合ってない気がしていたが「結香は絶対に渡さない」、「結香が男性と話してると汚らわしいから辞めてほしい」と言う。私は「言ってることがよくわからない」と言うしかなかった。しかし、これ以上、久留美と話をしていても無駄な気がしてきた。久留美はとにかく私が結香から離れてほしいの一点張りなのだ。そこで私は「そういう話は結香としてほしい」と言って話を終わらせようとした。すると「わかったけど、あなたをずっと恨み続ける」と久留美は言った。これで久留美との話は終わった。しかし、同性愛の恋愛感情とは恐ろしいものだ。これほど相手を想える気持ちになれるのは、やはり同性同士だからこそであろう。同性であるからこそ、心を繋ぐことも絆も深めていきやすく、心をうち解けるのも、お互いを理解しあうことすら異性同士に比べれば断然早いのだろう。それと同時に相手への気持ちも深く大きなものになるのだろう。この話で私は、久留美のとてつもない嫉妬心が恐怖にも感じさせられたぐらいだ。
さて、私はこの事を内密に結香に話した。たしかに結香と久留美は何度かリアルで逢って肉体関係になっていたらしいが、もう1ヶ月ほどは会っていなかったようだ。結香が久留美と会わなくなったタイミングと私の登場で、久留美がどうやら勘違いしたらしい。結香は自分が癒されたいという気持ちと淋しさで久留美と関係が発展したようだ。しかし、この話を聞いた結香は久留美に対して恐怖心が芽生えたようだった。久留美が自分に対してそこまでの気持ちになっていたとは思いもしなかったらしい。実は以前から結香はもう久留美と同性愛関係を断ち切ろうと思っていた。それは久留美の束縛が激しかったことや真子に対しても同じような嫉妬心を抱いていた事もあって、結香にとって耐えられず辛く苦しかったという。そこで結香は真子にこのことについて相談したようだ。どちらにしても久留美のことがあったので、しばらく私は結香との会話をひかえる事にした。
それから10日ほどして、私は真子と話をすることになった。同性愛関係について知った私は真子を否定することはなかったが、麻雀サイトでも誰にも言わないでほしいと言ってきた。どうやら真子は普通じゃないことをしてるみたいで恥ずかしいらしい。その後、結香はどうなっているのか聞いてみると、最初はかなり怯えていたらしいが、真子が「少しずつ時間をかけて離れていけばいい」というアドバイスをした。結香もその方向にもっていくようにしているようだ。しかし、同性愛者は男性をそんな風に思っているのかという疑問があったので真子に聞いてみると、久留美は異常なくらい男性嫌いらしく全員がそういうわけではないらしい。真子は男性が苦手なだけで嫌いというわけでもなく、接し方がわからないというだけだという。そんな真子でもいつかは結婚はしたいと言う。
真子とこの話をしてから、私はもう結香と話をすることはなかった。それから3ヶ月経った頃、外ではセミの鳴き声が聞こえていた。ある日、久々に真子と麻雀をすることになった。麻雀をしながら真子から結香は久留美とうまく別れることができたと伝えられた。
私の人生経験で今回の事は、同性愛というものがどれだけ深く強い絆で結ばれているものか教えられ、愛の深さを見習らわされた気がした。私はそれが男女の関係であればと思う熱い夏の日であった。