隠された真実

このストーリーは60%くらい実話ですが、登場人物名などは仮名(架空)であり、実在のものとは関係ありません。

■ クリスマスデート
私の彼女である柏木莉奈は私より年下の大学四年生。少し垂れ気味の大きな目にセミロングヘアー、背丈は少し高めのスラっとした女の子で富山県に住んでいる。昔の音楽を演奏してくれる小さなライブハウスのファン同士の集まりで知り合った。私と莉奈はお互いに意気投合して、遠距離恋愛になることを覚悟に付き合うことになった。お互いの両親公認での交際になり、莉奈はこっちでの就職も既に決まっていて、来年度からは同棲生活をすることになっている。遠距離恋愛であったが、一ヶ月に一度は会っていたし、夏休みの間はほとんど私の家で過ごしていた。



莉奈と付き合って8ヶ月が経った頃、私はあるIT関連会社に就職していた。残業が多く多忙で、莉奈と電話する時間も少なくなっていた。莉奈は携帯でのメールのやりとりは苦手とのことで、連絡はほとんど電話だった。いつもは1時間から2時間ほど電話で話していたのだが、最近は帰りが遅くて、5分程度しか話せていない毎日が続いていた。遠距離恋愛で一ヶ月に一度しか会えないうえに電話で話す時間も少ないのは淋しいが、今は頑張って仕事をするしかないと私は我慢していた。12月に入ってもその状況は変わらなかった。年末の忙しい時期だったがクリスマスイブだけはなんとしてでも莉奈と二人で過ごしたかったので無理して会社を休み、私は富山県まで車を走らせた。
前回は11月上旬に会っていたので、莉奈とはかなり久しぶりに会うことになる。クリスマスイブの夕方、莉奈の自宅近くの公園が待ち合わせ場所。私は少し早めに着いたことを連絡して待っていると、すぐ莉奈もやって来た。「久しぶり。最近なかなか話せなくてゴメンね」「ううん、大丈夫。仕事忙しいんだよね?」私と莉奈はそこから少し離れた場所にあるファミリーレストランに入った。最近は電話であまり話せてなかったので、お互いにいろんな話をしていた。私が仕事の話をすると莉奈は「無理しないでね」と何度もいってくれた。時間を忘れるほど話し込んでいると、莉奈の携帯電話が鳴った。莉奈は携帯のボタンを押して画面を覗いていた。どうやらメールらしい。「メール?」「うん、メル友から」「うん?そうなんだ。返さなくていいの?」「大した用事でもないから大丈夫・・・それよりこれからどうする?」「雪は積もってないみたいだし、ドライブしながら夜景でも見に行く?」「うん、いくいく!」店を出て山のほうへ車を走らせた。富山の夜景を一望できる場所で、お互いにクリスマスプレゼントの交換をしあった。私は次の日も仕事だったので、莉奈を自宅付近まで送った後、急いで自宅に帰った。短い時間だったが、莉奈とクリスマスイブを過ごせて本当に良かったと思った。どうせ年末年始にまたすぐ会えると思いながら・・・

■ 状況変化
年末年始に二人で会う約束をしていたのだが莉奈は「来年からはそっちで暮らすし、今年は最後になるから家族と過ごす」という理由で断ってきた。私は一日くらい二人で会う時間くらい作れるはずなのに、何かおかしいとあることを疑っていたのだが了承した。その後、莉奈と電話で話していても、話が盛り上がらない。何かとぎれるような会話ばかり続いた。何かがおかしい!?次にいつ会うか約束しようにも莉奈は「予定がわからないから待ってほしい」と言い続ける。ところがある日、莉奈の両親から話があるということで、次の週末に莉奈の実家に行くことになった。両親かあら何の話をされるのだろうとドキドキしていた。両親からの話とは、莉奈との将来を真剣に考えているか?莉奈がそっちで暮らすようになったらよろしくお願いしますという内容だった。ただ、多忙な毎日を続けていた私の顔色が悪かったことに、莉奈の両親も心配して「無理せず転職も考えたほうがいい」と言ってくれたのは有難かった。帰り際、少しの時間だけ莉奈と二人きりで話をしたのだが、どうにも莉奈のテンションが低い感じがした。「莉奈、なんか元気なさそうだけど悩みでもあるの?」「ううん、大丈夫」その時は、そのまま聞き流したが、私はどうにも最近の莉奈は何かがおかしいと疑っていた。
その”何かがおかしい”と疑っていることとは、ある一つのことなのだが、今の段階では確証がないので何とも言い難い。ただ、私の疑っているその”一つのこと”は推測にすぎないが、それが正しければこの先のことを覚悟しないといけない。しかし今はそれについて動いてはいけないし、何もできない。しばらく莉奈の様子を伺うしかない。私は帰りの車の中でそんなことを考えていた。
一月末、ついに私は過労で倒れてしまった。働きすぎだったのだ。会社の上司からは「しばらく静養して復帰してほしい」と言われたが、私の中ではこの会社でもうやっていけない気がした。その事態を莉奈に伝えると「そうなんだ。やっぱり静養して転職を考えるべきじゃない」とだけ言われた。莉奈の言ってることはわかるが、その言い方がなんか冷たく感じた。やはり今の莉奈はおかしいと疑いを持った。これから一緒に暮らしていく彼氏が倒れたと言ってるのに、もう少し慰めの言葉があってもいいはず。そういう感情がなく、まるで事務的な対応をしている話し方なのだ。とりあえず私は退職という形ではなく、長期休暇をして静養することになった。
長期休暇が続き二月に入った頃、私は莉奈が次に言ってくることを予想しながら心配になっていた。その心配とは同棲生活を辞めると言ってくるんじゃないかということ。ある日、莉奈に電話をすると「大事な話がある」と言われた。「ワタシ一人暮らしの経験がないから、一年間でいいから一人暮らししようと思ってる」「一人暮らしって大変だよ。お金もかかるし住む家も今から探すの?」「就職する会社に社員寮があるらしくて、そこで暮らそうと思う」「でも、なんでいきなりそう思ったの?」「だってワタシの人生だから・・・両親にはもう伝えてる」私の予想していたことがまさに的中した。やはり莉奈はおかしいと疑いを持った。しかし私はそれ以上のことはもう言わず了承しておいた。

■ 謎の行動
2月14日のバレンタインデーが訪れた。私の体調も良くなり、しばらくは半日出勤で残業はしないという条件で仕事に復帰していた。遠距離恋愛なので莉奈からのバレンタインチョコなんかは期待してなかったが、いつものように電話をした。しかし、何度コールしても莉奈は電話に出てくれない。2時間後にもう一度電話をかけたが、やはり出ない。こんなことは付き合いだしてから初めてのことだ。おかしい!莉奈は一体何をしているのだろうか?もしかして私が疑い続けている”一つのこと”は正しいのかもしれない。しかし、それを証明できるものは何もない。だから何もできない。やはり莉奈の様子を伺うことしかできない。次の日、会社から帰宅した私は莉奈に電話をかけてみると、莉奈はあっさり電話に出た。「昨日、2回ほど電話したけど出れなかったの?」「ゴメン、昨日は疲れてて早く寝てしまったの」「大丈夫?体調悪いの?」「学校でいろいろあって疲れてただけだから大丈夫」「いろいろって?」「簡単に言えば授業が多かったって感じかな」「そうなんだ」その後、何気ない会話が続いて電話を切った。私は莉奈が電話に出なかった理由についてあきらかにおかしいと疑った。もしいつもの莉奈であれば学校でいろいろあったなら、その”いろいろ”を私に詳しく言ってくるはず。それに寝ていたという理由も怪しい。私が最初に電話をしたのが18時半過ぎで、次に電話をしたのが21時前なのだ。いくら疲れているとはいえ、そんな早い時間から朝まで寝ていたとでもいうのだろうか。
それから次の週末の夜、いつものように電話をかけると莉奈は「ゴメン、今忙しいから切るね」といって電話をきった。ざわざわした音がしていたのでおそらく外にいるのだとわかった。また後で電話がかかってくるだろうと思ったが、その日はかかってこなかった。次の日の夜、再び電話をかけてみた。「昨日は外にいたみたいだけど、何してたの?」「昨日は友達と遊んでたの。ゴメンね」何気ない会話が続いて電話を切った。友達と遊んでいた!?あきらかにおかしい!もし、本当に友達と遊んでいたのであれば”忙しいから”というキーワードが莉奈の言葉から出てくるわけがない。やはり私の推測する”一つのこと”は正しいのだと思った瞬間だった。その後も毎日のように莉奈と電話で話していたが、会話が盛り上がらない状態が続いた。電話で話す時間も次第に短くなっていった。以前の莉奈とは話し方が全然違う。そう疑い続けていた。
莉奈の謎の行動と私の疑いについて、真実をハッキリさせる方法を考えていた。しかし遠距離ということもあって、莉奈に会って顔色や態度を伺うことは難しい。かといって内密に莉奈の後をつけるという探偵みたいなことをやらかすわけにもいかない。どうしたものか・・・それとなく自白させてしまうという手もあるが、それはかなり難しい。莉奈の言葉を一つ一つ疑いながら話を聞いていく方法もあるが、それは今もやっている気がするし確実性がない。正直に聞いてみるという手もあるが、今の莉奈の様子からして素直に話すとも思えない。いろいろ考えてみるがいい方法が思いつかない。ちょっと待て!と心の中で自分に呟いてみた。私は今の自分が考えてることを客観的に見てみる。私は何か焦っているんじゃないか?早く問題解決させようとしているのか?問題解決?一体、何をすれば問題解決になるんだろうか?真実をハッキリさせて、自分の推測が正しいと確実に証明できれば、それで問題は解決するのか?いや、それは違う。問題解決のゴールはそこではなく、あくまで莉奈とこれからの未来を踏むことではないか。今できることは莉奈を見守りつつ、おかしいと思う部分を一つ一つ繋いでいけばいい。私の推測していることを証明させるには、その”おかしな部分”のつじつまを合わせていくこと。そうすればいずれ真実は明らかになる。今はまだそれが足りていない。今はまだその時ではない。

■ 態度急変
三月に入り、莉奈との同棲生活も延期になったので、私はやはり退職すると決めた。毎日のように莉奈と電話するが、相変わらず様子がおかしい。そのおかしいと思うことを一つ一つメモしていくことにした。週末、久しぶりに莉奈と二人で会うことになった。二月は体調不良が続いたりして会えなかったので久しぶりだった。いつものように莉奈の自宅近くの公園で待ち合わせしていた。莉奈がやってきたが表情があきらかにおかしい。まるで精神病にでもなっているかのような感じで暗い。「久しぶりだけど、どうしたの?表情がおかしいよ」「そう見える?引っ越し前だからかな。あと一ヶ月でしょ?不安とかあるし・・・」「不安があるなら話してみて」「話しても意味ないかも。これは自分の問題だから・・・」その日の莉奈はずっと暗い表情をしながら話していた。しかも明らかにおかしいと思うのは表情だけではなかった。今回は私に対して「好き」「愛してる」を連呼してくる。結局、何気ない話をしただけで、二人の時間は過ぎ去った。莉奈を自宅へ送った後、私は帰り途中の車の中で考えてみた。莉奈の態度の急変は一体何を意味しているのだろうか?私の推測が正しければただ一つ、莉奈の中で何かが終わったに違いない。その何かは私が推測していた”一つのこと”である。もしそうであれば、しばらくすると以前の莉奈に戻るはず。どう変化するかしばらく待つことにした。
莉奈と会ってから一週間が過ぎた。莉奈とは毎日のように電話で話をしていたが、暗い感じで話もすぐ終わってしまう。それでも私は待っていた。そしてある日、莉奈が「もう大丈夫!不安があったけど前に進もうって決めたから」と元気な声で言った。これこそまさに以前の莉奈だった。会話も以前のように盛り上がる。おかしな部分もなくなったように思える。私は一瞬ほっとしたが、これで終わりではないと思った。肝心なのはここからなのだ。電話を切った後、私は今までとってきたメモを読み返す。そして今までの莉奈の行動や言動を思い出しながら、つじつま合わせをしていく。私の推測する”一つのこと”への真実に辿り着くまであと一歩のところまできているのがわかった。
三月末になり、莉奈の引っ越し作業がはじまった。莉奈が一人暮らしをする会社の僚は私の家から車で30分ほどのところだ。引っ越し作業には莉奈の両親もきていた。私と私の妹まで手伝いにいった。莉奈は新しい生活がはじまることにワクワクしているように元気だった。その後、私の両親との顔合わせになった。もう結婚でもするのかという勢いでお互いの両親が話をしていた。最後に莉奈の両親から「あなたを信用して娘を出すので、本当によろしくお願いします」と私は言われた。この言葉は私にとって痛恨の一撃だった。私はこの信用を裏切ってはならない。娘を出す両親の気持ちは相当なものに感じる。莉奈との未来を明るいものにしなければならないのだ。そのためにやらなければならない。
私はもう一度、今までの出来事を整理してみた。真実まであと一歩のところまできているのはわかっている。しかし、その一歩が何なのかがわからない。何かを見落としてはいないか?それともまだ見えてない何かなのか?何か忘れているものはないか?あれこれ考えてみるがわかりそうでわからない。髪の毛をぼりぼりとしながら莉奈の写真を見る。そういえば態度が急変したあと、莉奈は以前のように話しているけど、莉奈の気持ちってどうだったんだろうか?今はどう思ってるんだろうか?それだ!それがあと一歩なのだ。
あと一歩を見つけるため、私は莉奈に電話をして話を聞いてみることにした。「ところでさ、莉奈って俺のことどう思ってる?」「どうしたの今更?」「これからのこともあるし、再確認しようって思って」「好きだよ。大好き。愛してる・・・って恥ずかしいよ」「でも、俺に対する気持ちで悩んだことなかった?好きなのかな?とか・・・」「正直言うと悩んだことはあるよ」「それって最近のこと?」「うーん、最近といえば最近かも。でも今はちゃんと好きって言えるよ」「そっかよかった。これからなんだけど・・・」「うん!これからは仲良くしていこうね」「そうだね、仲良くしていこうね」これでハッキリした。実はこの会話には一つかまをかけていたが、見事にハマってくれた。これで真実は明らかになった。残る最後は証拠だけだ。

■ 証拠と真実
全てのつじつまは合った。真実も明らかになった。これだけでも莉奈と真剣に向き合って話ができそうだが、やはり証拠がほしい。証拠といっても今更何があるのか?何かが残っていればいいのだが・・・
莉奈が引っ越しして二週間が経った。私は週に二度ほど莉奈は暮らす僚に行っていた。合鍵も預かっていた。ある日、莉奈の家に行くと約束した日に、急な残業で帰りが遅くなるから部屋に入って待っていてと連絡がきた。私は約束していた時間に莉奈の部屋に入って待っていた。しかし、ただ待ってるだけなのは暇すぎた。私はあまりテレビを見ないので、本でも読もうかと思って本棚から一冊の本を読むことにした。それは小説だったのだが、読んでいると意外に面白かった。必死に読んでいると難しい言葉がでてきた。どういう意味なんだろう?って疑問に思った私は本棚にあった辞書を開いて調べてみることにした。パラパラと辞書を開いていくと、小さな一枚のプリクラ画像が床に落ちた。即座に拾って見てみると、そこには私の知らない男と莉奈が写っていた。しかも真新しい。これぞまさに証拠ではなかと思った。私は即座にあることを携帯で調べた。そしてこれこそがまさに確実な証拠であることが判明した。真実と証拠が揃ったところで莉奈の帰りを待つことにした。
玄関の扉が開いた。莉奈が帰ってきたのだ。莉奈が落ち着いたところで、私は大事な話があるといって莉奈の向かい側に座った。
「莉奈、正直に言ってほしい。俺に隠し事してるでしょ?」「え?隠し事?何もしてないよ」「俺に隠し事は通用しないよ。もう全てわかってる、いやわかっていたというのが正しいかな」「えっ?知ってるって・・・もしかして・・・」「そう・・・莉奈、浮気してたよね?」「どうしてそう思うの?」私はまず証拠となるプリクラを出した。「これは誰?いつ撮影したもの?」「それは・・・そう、3年ほど前の彼氏」まだしらをきるつもりなのか?「このプリクラは新しい。3年前だったら色あせてるはず」「そんなこと・・・ない」「それと莉奈が着ているこのコート。これ買ったのは3年以上前って言うの?」「それは・・・」莉奈は誰が見ても焦っている仕草をしている。「このコートは莉奈がよく着ているやつで、そこにかけてるやつ。さっき俺はそのコートのタグから、いつ製造されたものか調べてみた」「・・・」「俺は莉奈に怒ってないから、もう正直に話してほしい」「わかった・・・その男の人は智弘君といって、ワタシは浮気してた」「やっぱりね。俺はわかっていたんだよ」「でもどうしてわかったの?プリクラ見ただけでわかったの?」「いや、このプリクラは単なる証拠だよ。男友達って可能性もあるからね。でも確実に浮気をしてるってわかってたんだよ」
ここから私の長い説明がはじまった。

■ 語られる真実、そして未来
「おそらく浮気しようと悩んでいたのが今年の一月で、実際に浮気を実行したのが二月ってところかな。年末年始に会う約束をしていたのに断った時、一日くらい時間を作れたはず。それ以来、莉奈の態度が急に冷たくなった。電話で話してもいつもと何かが違う。悩み事をしているというより、なんか俺を避けてる感じがしてた。この態度の変化は何を意味するのか考えてみて、浮気じゃないかと推測してみた。ただ、まだその時は確証がなかった。でも莉奈の不自然な話し方やテンションの低さからして、行動や言動に不審な点が多かった。俺が倒れた時のあの冷たい態度も彼女という存在からして不自然だった。あの時の莉奈は俺に対して感情的というより事務的に話をしているって感じだった。一人暮らしがしたいって言ってきたのも不自然だった。あれほど同棲することにテンション高かったし、そもそも淋しがりの莉奈が一人暮らしがしたいってのもおかしいって思った。そしてバレンタインデーの時、電話に出なかった。疲れて寝ていたって言ってたけど、俺が電話をした時間を考えてみるといくら疲れたとはいっても寝すぎでしょ。あの時、おそらくその智弘君だっけ?会ってたんだよね?あと次に電話した時に『忙しいから切る』といってたけど、莉奈は友達と遊んでいたと言った。それが本当なら”忙しい”じゃなくて、”友達といるから”と言うはず。あきらかにおかしいって思ったよ。人は嘘をつくってことはその相手に後ろめたい何かがあるから。俺に対して後ろめたい何かって考えれば答えは一つ、それは浮気しかない。あの時も会っていたんだよね?そして三月に会いに行った時、誰がみても精神病にかかっているかのような表情だった。莉奈は不安があるからと言ってたけど、そんな程度の表情じゃなかった。それに俺に好きだの愛してるだの連呼していたのも不自然だった。俺は浮気だと確信してたから、おそらく浮気相手と終わってしまったんだと判断した。おそらくその智弘って男には彼女がいたんじゃないかな?その彼女の元へ戻っていった感じだろうね。どちらにしても時間が経てば莉奈は立ち直ると思って待っていた。予想通り、以前の莉奈に戻ったかのように元気になった。俺に対して態度が急変した。俺はある時から莉奈のおかしな言動や行動をメモしていたんだけど、それを繋ぎ合わせてみると、浮気というキーワードにぴったり当てはまった。ただもう一つ確認したいことがあったから、最後に俺はかまをかけてみた。前に電話した時『俺のことをどう思ってるか?』って質問したことがあったよね?その時『これからは仲良くしていこうね』という言葉。実はこれを言わせたかったんだよ。おかしいと思わない?『これからは』ってまるで今まではそうじゃなかったみたいな言い方で変だよ。まあ、ついつい浮気をした後だったから言ってしまったんだよね?。それで俺は莉奈が浮気をしているという推測が真実だと確信した。こんな感じだけどまだ続けようか?」
度肝を抜かれたように同様している莉奈。「浮気をした理由については、おそらくだけど俺にも原因があるから責めるつもりはないし、逆に淋しい思いをさせてしまったことについては謝るよ」「その通り・・・ワタシは淋しかった。だから他の人に癒してもらおうと思ったの。でもごめんなさい」「いや、俺のほうこそごめんね。でも次は絶対浮気しないって約束してほしい」「わかった・・・約束する」これでやっと全てがあきらかになって問題解決したと思う。今後の莉奈との未来を明るいものとしていこうと思った。
少し沈黙が続いて莉奈は「一月からもう気づかれていたんだね」と呟いた。私は「いや、去年のクリスマスイブに会った時からだよ」と言った。すると驚いた表情で「ええーーー!!まさか!?だって、あの時はまだ智弘君とはメールのやりとりしかしてなかったんだよ?なんで?」と莉奈が言ったので「ファミレスで莉奈の携帯メールが届いた時『メル友から』って言ったの覚えてる?携帯メールのやりとりが苦手なのにメル友って、おかしなこと言ってるって思ったんだよ。つい思わず口から出ちゃったんだね?嘘でも友達からって言っていればよかったのに・・・その後、態度が変わったから疑うのは当然だよ」と言った。莉奈は全身の力が完全に抜けたかのように「お手上げだよ・・・でも、、、敵に回すと恐ろしい人ね、あなた・・・」と呟いた。
それから二か月後、莉奈がまた浮気していることが発覚した。浮気というものは一度してしまうと、中毒者のように二回目三回目としてしまうものなのかもしれない。さすがの私ももう莉奈との関係に終止符をうった。もはや莉奈の心は私から離れていると思ったので、終わりにしようと決心したのだ。たとえ莉奈がその浮気相手と付き合うことになったとしても、再び同じことをする可能性も否定できない。その浮気相手は何か特別な存在なんだと思うかもしれないが、いつか自分も同じことをされるかもしれないという認識を持っていたほうがいいと思う。浮気をする人は、また浮気をする可能性があるのだから。