日本百名山の一つである大峰は八経ヶ岳が注目されていて、百名山ハンターは行者還トンネル西口からの最短ルートで登って大峰に登ったことになっているようです。しかし勿体ないなっていつも思ってしまいます。なぜなら大峰の魅力とはそこではなく、日本でも他にない秘境の地であるという魅力があります。もちろん深田久弥さんが一番最初に述べている「大峰山はわが国で最も古い歴史を持った山である」というように歴史があり世界遺産でもあります。深田久弥さんが辿ったのは女人禁制である山上ヶ岳から大普賢岳、行者還岳を経て弥山小屋で宿泊、翌朝には残雪を踏んで近畿最高峰である八経ヶ岳の頂上へ登り、それに満足して山を下ったようです。つまり深田久弥さんが百名山に選定した大峰とは捉え方を変えれば大峰山脈そのものを指しているとも考えられます。
岩湧山の山頂から望んだ大峰山脈の山々
大峰山脈の秘境感はアルプスとはまた違った魅力があります。私は関西に住んでいることもあって大峰山脈の山々を登りまくっています。私は北アルプスも大好きな山脈の一つですが、この大峰山脈も大好きな一つでもあります。
今回はそんな大峰山脈の秘境感や魅力についての一部を紹介したいと思います。写真ではどこまで伝わるかわかりませんが、人間があまり入り込まない大自然の秘境感を少しでも感じていただければと思います。
弥山の直下からみた展望。果てしなく連なる山々を望むことができる
無積雪期
大普賢岳
大峰山脈の展望地から周囲の山々を見ているとポコンッと3つの連なった山が望める。その一番高いのが大普賢岳の山頂である。和佐又ヒュッテには駐車場やキャンプ場があり、さらに麓にはバス停もあるため、大峰の中でも人気のある山の一つといえる。
登山ルートの途中にある笙ノ窟。大普賢岳の登山道にはこのような巨岩がいくつも存在する
水太覗から見た大普賢岳の山容。岩が露出していて実際に見ると迫力がある
大普賢岳の山頂から望む大峰の山々。山上ヶ岳や稲村ヶ岳、バリゴヤの頭などを望むことができる
大所山(百合ヶ岳)
大所山(百合ヶ岳)は大峰山脈の中でも結構マイナーな山といえる。山頂付近でガスっていれば、かなりの秘境感溢れる原生林を見ることができる。
大所山(百合ヶ岳)の山頂付近でガスっているときの原生林。巨木に苔がついていて大自然の神秘を感じさせられる
かなり荒れた場所になっているが、これも自然が作り出した神秘的な風景といえる
行者還岳
大峰の中でも手軽に登れる行者還岳。山頂の直下には綺麗な小屋があり周囲の大峰奥駈道は秘境感が溢れる道となっている。特にガスっているときは神秘的。
行者還岳へ行く大峰奥駈道。ガスっているときは神秘的な登山道になっている
行者還小屋から見る行者還岳の山肌。岩肌がむき出しになっていて実際に見ると迫力ある。秋の紅葉時期や積雪期に望むとかなり絵になる
登山道の途中にある巨木。こういった巨木が大峰にはいくつか見られるのも魅力の一つだといえる
迷ヶ岳
大峰山脈でもかなりマイナーで知る人ぞ知る迷ヶ岳。正規の登山ルートはなく人が入り込んでいないため、踏み跡などもない大自然溢れる秘境の地になっている。(撮影:すぴら)
迷ヶ岳の周辺はまさに大苔地帯になっていて大自然の神秘を感じる場所になっている
どこまでも続く苔地帯。苔に触ってみると非常に柔らかい。こんな大苔地帯になっている秘境地は他になかなか見ることはできないと思われる
トサカ尾根
トサカ尾山があるトサカ尾根は正規の登山ルートでなく、完全バリルートで原生林や秘境感溢れる尾根道となっている。
植林もありながらガスっていればひっそりとした秘境感ある尾根道になっている
こういった木の根地帯も他ではなかなか見ることはできないのではないだろうか。大峰はガスってこそ魅力があるという人もいるが、まさにこういう風景もその一つなんだろう
鉄山~弥山
大峰の魅力を感じたいのであれば鉄山から修復山を経て弥山へ登るルートがいいのかもしれない。まさに鉄山から弥山の間は大峰らしい秘境感を感じることのできる登山ルートだろう。
鉄山山頂の直下はかなりの木の根地帯になっている。こんなに木の根がはりめぐらされてる場所は他にあまりみない
鉄山を過ぎた付近からは原生林や苔地帯があり、ガスっていればかなりの秘境感を感じることができる
修復山を過ぎて弥山の手前には大倒木地帯と呼ばれる場所がある。これほどの倒木地帯は珍しくて自然が作り出した神秘といえる
大倒木地帯から樹林帯に入った弥山の手前にある大苔地帯。もちろん人が入り込んでいないため踏み跡などない
釈迦ヶ岳~孔雀岳
釈迦ヶ岳~孔雀岳の大峰奥駈道は迫力ある谷や巨岩群がある秘境地といえる。大抵の登山者は釈迦ヶ岳を登頂して満足するのですが、そこから孔雀岳までの登山道に魅力がある。
釈迦ヶ岳から孔雀岳、仏生ヶ岳へ伸びる稜線。深い谷や巨岩を望むことができる秘境感溢れる登山道といえる
深い谷や露出した鋭く迫力ある岩群を望むことができる。こういった風景が望めるのも大峰山脈の魅力の一つといえる
ここも写真では伝わらないが迫力ある岩と切れ落ちた崖。断崖絶壁だが実際に見るとかなりの迫力がある
神仙平~あけぼの平
大峰山脈でもあまり知られていない秘境の地になっている七面山の周辺には神仙平といわれる高原地帯とあけぼの平という高原地帯がある。登山ルートもわかりにくいので初心者向けではないが、かなりの秘境地となっている。
神仙平から望む展望。人が入り込まない高原地帯からこんな風景を望むことができるのは訪れた人の特権だろう
神仙平の雰囲気はひっそりとしていて、神秘的な高原地帯といえる。紅葉の時期に訪れると素晴らしい風景が望めるんではないだろうか!?
七面山から下ったところにあるあけぼの平。ここから望む釈迦ヶ岳も迫力がある
あけぼの平は広大で人があまり入り込まない秘境感溢れる高原地帯といえる
地蔵岳
地蔵岳は大峰の南奥駈道の途中にある。アクセスが遠く非常に行きにくい場所であるので、人があまり入り込んでいない秘境地といえる。
地蔵岳の周辺はひっそりとしていて倒木や自然林など人の手が入っていない大自然の秘境地になっている
地蔵岳の近くには天狗の稽古場と呼ばれる草原地帯がある。人が入り込んでいない秘境の草原地帯といえる
大峰の沢
大峰山脈の沢は大峰ブルーなどと呼ばれるほど綺麗なブルーの水を見ることができます。沢で綺麗な水といえばグリーンというイメージがありますが、透明感のあるブルーの沢が見れるのも大峰山脈の魅力の一つといえるでしょう。もちろん秘境感溢れている沢が大峰山脈には存在します。
双門ルート
関西屈指の難コースとも言われている双門ルートは弥山川を辿るのですが、美しい沢の水と秘境感溢れる場所が存在している。大峰の綺麗な沢や秘境感を感じたいのであれば、双門ルートに行くのがいいかもしれない。
大峰ブルーと呼ばれるだけある美しい弥山川の水。透き通る綺麗な水であることがよくわかる
日本の滝100選の中でも最もアクセスが大変とされる双門滝。仙人のテラスより望む
知る人ぞ知る石の双門。この岩は実際にみるとかなり迫力がある。双門ルートに行く人は訪れたい場所のようだが、道を知っていないと辿り着けない秘境の地
双門の滝壺。通常は絶対に訪れることのできない秘境の地。訪れてみると迫力ある滝壺や岩がそびえる。訪れるにはかなりの事前調査が必要である
神童子谷
稲村ヶ岳と大普賢岳の間を流れる川迫川は神童子谷と呼ばれていて、大峰ブルーの水が見られ秘境感溢れる沢であるといえる。毎年のように遡行したい沢の一つといえる。この沢の魅力はここで伝えきれないのが残念なところである。
神童子谷の見所の一つであるへっついさんというゴルジュ。透き通った水と神秘的なゴルジュである
赤鍋滝上部の神秘的な空間。まるでここだけ別空間であるかのようだ。しかも透明感あるブルーな沢の水が美しい
ノウナシ谷と犬取谷が合流して自然に作り出された神秘的な滝。二つの谷が繋がって一つになっているこのような滝は非常に珍しいだろう
前鬼川
釈迦ヶ岳の麓に流れる前鬼川は今まで行った沢の中でも一番、透明感のある綺麗な水が流れる沢といえる。最近は遡行する人が増えたので沢の水が汚れないか心配だが、毎年絶対に行きたい沢である。
ブルーの滝ともいえる二段10Mの滝。滝壺がブルーに見える滝なんて他に見たことがない。この水の透明度は素晴らしく綺麗である
まさに大峰ブルーといえる水の色。前鬼川は大峰ブルーの宝庫であるかのように美しいブルーの沢が見られる
箱状廊下とよばれるちょっと変わったゴルジュ。一つの滝になっているが、やはり滝壺になっている部分は大峰ブルーなのだ
積雪期
冬の積雪期の大峰山脈はちょっと他とは違う雪景色を望むことができます。しかしながら、さすがに積雪量が多いエリアであるので天気に恵まれないことが多いのが残念です。今回紹介できる雪景色はほんの一部ですが、大峰は雪景色も素晴らしいのです。
積雪期の八経ヶ岳山頂
シェイクスピア氷瀑群
大普賢岳の東斜面に位置するシェイクスピア氷瀑群と呼ばれる氷瀑。毎年、この氷瀑を見るために訪れる登山者も少なくない。アイスクライミングの場所でも有名であるが、こんな氷瀑が見られるのも大峰ならではといえるだろう。
写真では伝わらないが迫力ある氷瀑。こんな氷瀑は関西では見ることがあまりできないだろう。この時期は既に氷が解け始めていた
氷瀑の中に入るとこんな感じで、人が写っていると氷瀑の迫力がよくわかると思われる。表面のつららが分厚くここまで凍ってしまうくらいの気温なのかと思わされる
積雪の修復山
冬の積雪期に修復山を訪れるためには鉄山を経由するのだが、完全バリルートの人が入り込まないこの地帯の雪景色はまさに秘境感溢れている
まさに人のいない積雪地帯。足跡すらなく、自然が作り出す白銀の世界といえる。こういう雪景色が見られるのも大峰の魅力の一つだろう
樹林を覆う雪、そして霧氷も他ではあまり見られないような素晴らしい雪景色と化している。こんな分厚くなっている霧氷は関西であまり見ることはできないだろう
素晴らしい青と白のコントラストというのは、まさにこのことかもしれない。足跡もなく自然が作り出した雪景色を見ることができる
積雪期の釈迦ヶ岳
普段は簡単にアクセスできる釈迦ヶ岳も積雪期に訪れるとなるとかなり大変なのである。しかし、積雪した道路を歩いて訪れると白銀の世界が待っている。
積雪した釈迦ヶ岳の山容。尾根に出ると高原地帯になっていて一面が白銀の世界と化している。これで霧氷が見れればさらに素晴らしい雪景色を見ることができるだろう
大峰の雪質は非常に重いといっていいほど。ラッセルは当たり前にしなければならなく、ある意味アルプスより雪山登山の難易度は高いのかもしれない
積雪期の釈迦ヶ岳山頂というのはなかなか辿り着くことは難しいのではないだろうか。達成感もありながら、誰もいない雪山という雰囲気を味わうことができる
大峰の魅力について紹介しましたが、いかがだったでしょうか?少しでも大峰の秘境感や神秘的な山域であることが伝わればいいなぁと思いますが、それと同時に登山者が増えて大峰の良き自然が壊されないようにと思っています。