このストーリーは60%くらい実話ですが、登場人物名などは仮名(架空)であり、実在のものとは関係ありません。
■ 久々の再開
残暑。この暑さはいつまで続くんだろうと思う9月の末。私はパソコン講師のバイトを続けていた。ある日、駅を歩いていると一人で歩いている女の子とばったり会った。「お久しぶりです!先輩」と声をかけてきたのは樫山絵美で一つ年下の学生時代の後輩だった。そういえばこの駅は学校の最寄り駅だった。学生時代、担当科目の先生が同じという縁で樫山絵美と知り合って、学内で会った時に話をしていた仲だった。樫山絵美は小柄で目が大きくキュートで、それはもうアイドル並みといってもいい。
「絵美、久しぶり」「先輩、今帰りですか?」「バイトの帰りだよ。絵美も帰り?」「はい」「そういえば絵美も今年卒業だけど進路は決まった?」「それがまだなんですよ」何気ない会話が続く。「先輩、今日ってこれから時間空いてますか?」「特に予定はないけど」「よかったらどこかでお話しませんか?」「別にいいけど、どっか店に入る?」「この近くに安いお店しってるのでそこに行きませんか?」「いいよ」そういうやりとりで入ったのが駅近くの居酒屋だった。
話を聞いてみると絵美はどうやら進路で悩んでいるらしい。自己分析しているかのように自分のことを話す絵美。どこか理屈っぽい話し方は学生時代と変わってはいない。こんな自分の性格に向いてる職業が何なのかわからないと話す絵美。絵美は前向きの性格だがイエスかノーかハッキリしないことに考え込んでしまう。それも変わってなかった。私は話を聞いて「向いてる職業というより絵美がやりたいことを見つけてみることからはじめてみればどうかな?」と絵美に提案してみた。「アタシのやりたいことかぁ・・・そういえば先輩はこのままパソコンの道に進むんですか?」「そうだね。文系だったから就職できずに今はバイトになってるけど、経験を積んでその道に進もうと思ってるよ」こういう会話が続いて時間が経っていった。
帰り際に「先輩、連絡先の交換しませんか?またお話したいです」「いいよ」と言って連絡先を交換した。それから一週間ほど過ぎたある日、絵美から「突然ですが、アタシにパソコンを教えてもらえないですか?」というメールが届いた。「別にいいけど、どこで教えればいい?」とメールを返すと「お邪魔でなかったら先輩の家までいきます」という返事が返ってきた。「俺の部屋、汚いけどそれでよかったらいいよ」と返した。「じゃあ今度の土曜日空いてますか?」「夕方なら空いてるよ」「じゃあ今度の土曜日18時に伺います」「俺の家はわかりにくいから駅まで迎えに行くよ。駅に着いたら連絡して」「了解しました!よろしくお願いします」こんなメールのやりとりがあり土曜日の夕方、絵美から「駅に着いた」とメールが届いた。
■ 意味深な発言
絵美はパソコンがあまり得意ではないらしいが、就職するにはある程度の知識が必要だという。私はまず、企業でよく使われるワードとエクセルを教えることにした。教えるといっても私の持っていたマニュアル本を読ませて、その通りに操作させる。わからない時は私に質問するという感じだった。2時間ほどするとさすがに疲れた絵美の手が止まる。私が「今日はこのくらいにしておこうか」「はい」と答える絵美。その後、何気ない日常会話をして駅まで絵美を送った。「先輩、また来てもいいですか?」「別にいいよ」と言葉を交わしてその日は終わった。絵美に対して何の感情もなかったが、私は一つ気になっていたことがあった。絵美には四年も付き合っている彼氏がいるのに、他の男性の家で二人きりになるのは彼氏に悪くないかということだった。でも別にやましいことなんかないからいいかとも思った。
それから、絵美は何度となく私の家に来る回数が増えてきた。私はどうしても昼間に時間がとれないので、決まって夕方から夜にかけて来てもらうしかなかった。2ヶ月ほど経って、絵美もずいぶんパソコンに慣れてきたようだ。最近では自分の調べたいことをインターネットで検索することも出来るようになってる。もう教える必要はなくなってきた。しかし、絵美は自分のパソコンを持ってないこともあってか、私の家に来ては手際よくパソコンを触る日々は続いた。何気ない日常会話は次第に絵美の相談事や自分の思ってることなど少し深い話にまで発展していった。絵美の話を親身になって聞く私。こういう話を敬語でされるのは苦手なので「敬語は使わなくていい」と絵美に言った。そして絵美は普通に敬語を使わず話してくるようになった。絵美は私にとって可愛い後輩だけど、どこかしら妹のような存在にもなっていった。
そんなある日、絵美が突然「先輩がアタシの彼氏だったらいいのになぁ」と言った。この意味深な発言はなんだろうと疑問に思ったが、私はそれに対して何も答えなかった。しかし、この発言が何を意味していたのか思い知らされることとなる。
■ 謎の話
いつものように私の家にやってきた絵美。しかし最近、絵美が私と話す時の距離が近くなっていることに気づいていた。私がベッドに座って話しているとすぐ隣に座って絵美が話をする。これだとまるで恋人同士の距離である。話している最中に私の肩に手を置いたり腕を掴んだりするボディータッチもしてくるようになっていた。親密な仲といえばそれまでだが、あきらかに友達同士と思える話し方ではない。友達以上、恋人未満ってところだろうか。そういうことを意識しながらもこういう状態が続いていた。
ある日、絵美は「明日、久しぶりに彼氏が家に来るんだけど、どう思う?」と聞いてきた。四年も付き合ってる彼氏が家に来ることに何の不思議もないが、なぜ私にそんな質問をするのか疑問に思った。「どう思うって言われても普通じゃない?」と答えると「もう半年も会ってないし、連絡もあまりしてないからどんな顔をして会えばいいのかなって・・・久しぶりだから”ときめいたり”するのかな!?」と答える絵美。久しぶりに彼氏と会うはずなのに、あまり嬉しそうな感じがしない。その後、「彼氏って結構せまってくるタイプだし、どうしようかな」、「彼氏って子供っぽいところあるから機嫌が悪くなったらすぐ怒るんだよね」、「彼氏の内気なところが可愛い」など彼氏の話ばかりする絵美。私はただ、そうなのかと思いながら絵美の話を聞いていたが、なんかこの話には違和感があった。彼氏のことを説明文を読んでいるかのように話しているだけのように思えた。しかも無理に”彼氏”という言葉を連呼しているようにも思える。そもそもなぜ私にそんな話をするのか疑問に思った。今までは自分の考えてることや感じてることを話してきた絵美が、無感情で彼氏のことを私に説明しているのは謎の話といってもいい。私は「まあ久しぶりに会うわけだから何か新鮮味があるかもね」と言ってみると、絵美は暗い表情で「そうかもね」と呟いた。この暗い表情も私は見逃さなかった。大好きな彼氏と会うのに全然楽しそうでもなく、むしろ何故かテンションが下がっている。その日、絵美を駅まで送った後、私は一人ベッドに横たわって考えてみた。今日の彼氏の話は一体なんだったのか!?なぜ無感情なのか!?最後はなぜテンションが下がっていたのか!?先日の意味深な発言のことから今日の話・・・なるほど、そういうことか!私の頭の中でパズルが揃った瞬間だった。
■ 音信不通
絵美が彼氏と会ってから二日後、再び私の家にやってきた。私はあえて彼氏と会ってどうだったかという話はしなかったし、絵美も彼氏と会って喜びの話をすることもなかった。何事もなかったかのように話をするが、やはり絵美の距離が近い。最近はパソコン操作も慣れてきて、積極的に自分のやりたいことを見つけようとしている絵美は生きた目をしているように思えた。絵美はオシャレなカフェに行ったり、観光したりするのが好きなようなので、それに関わる仕事を探してみると言った。絵美は完全に前向きになってるので良かったと思った。
しかしある日、絵美が家に来ると約束していたが、何の連絡もなく来なかった。心配した私は絵美に電話をすると「行けなくてごめん。今忙しいから切るね」といって電話を切った。それはまるで別人のように冷たい言い方に感じた。次の日、絵美に何かあったんじゃないかと思って電話をしてみたが、何度鳴らしても電話に出なかった。忙しいのかと思って絵美からの電話を待っていたが、かかってこない。そのまた次の日、絵美に電話をしようと考えたが何かしら事情があるのかもしれないので、そっとしておこうと思った。まあ気長に待つか。
それから数日後・・・突然、絵美から電話がかかってきた。絵美は「ちょっと忙しかったから連絡できなかった」といった。そして何事もなかったかのように話をした。気長に待っていた私は少し心配はしていたが、絵美はいつものテンションだったのでほっとした。何が忙しかったかを聞いてみると「学校のこととかいろいろ」としか言わない。私はあえてそれ以上は聞かなかった。この時期、別に学校行事で忙しいことなんてないような気がしていたし、”いろいろ”って曖昧で意味がわからない。もし、その”いろいろ”が悩みや相談事であるなら、絵美は私に話をしてくるはず。何かおかしい。そう思いながら電話が終わった後、私は再びベッドに横たわって考えてみた。あの別人であるかのような冷たい言い方とその後の音信不通、そして絵美の言い訳っぽい”いろいろ”は何を意味しているのか。意味深な発言から謎の彼氏の話、そして今回のこと。頭を整理していると・・・これはもしかして!?とあることが思い浮かんだ。
■ 接近
音信不通が終わった電話から3日後、再び絵美が私の家にやって来た。インターネットで仕事を探しているようだった。突然、絵美が「先輩、今日はちょっと調べたいことがあるから、朝までパソコン触らせてもらってもいい?」と言ってきた。私は「別にいいよ。俺は途中で寝てしまうかもしれないけど・・・」と答えた。「朝は歩いて駅まで行くので先輩は寝ててもらっていいよ」という絵美。深夜、徹夜しようかと思ったけど眠くなってきた。ベッドに横たわると絵美が立ち上がってベッドに近づいてきた。「先輩、アタシも少し疲れたので隣で横になってもいいかな?」といって断りもなく私の隣に横たわってきた。私の眠気は一気に覚めた。絵美が何を考えてるのかわからない。彼氏がいるのに他の男の横で寝るってどういうことなんだろう。私は壁際に顔を向けて横たわっていたが、絵美は私のほうに顔を向けている。背中にかすかな絵美の息を感じる。少しの間、この状態で沈黙が続いた。この状況はまずい、とりあえず起き上がろう!そう思った私は起き上がった。すると同時に絵美も起き上がって私に抱きついてきた。なんなんだ!?絵美は何も言わず私を抱きしめている。少し経って「ごめん」と言って絵美はベッドから離れてパソコンを触りだした。私は絵美の行動の意味がなんとなくわかっていたが、何があっても絶対に手を出さないようにしようと心に決めた瞬間でもあった。
2日後、再び絵美が家にやってきた時、いつものようにインターネットで色々検索していた。私はベッドに座って本を読んでいると突然、絵美が立ち上がってベッドのほうに歩いてきた。私が見上げた瞬間、絵美は私に抱きついて押し倒してきた。そして「先輩」と呟いて、いきなりキスをしてきた。不意をつかれたキスに戸惑ったが、私はすぐに正気に戻った。絶対に手を出してはいけない!しかし振り払うこともできない。このまま一線を越えることも簡単にできそうだが、それだけは避けないといけない。数分間、抱きついたままの状態になっていたが、絵美は立ち上がってパソコンを触りだした。それから無言が続いた。結局その日は遅くなったので絵美を駅まで送っていった。
絵美は一体何がしたかったのか。ただ淋しいだけ!?手を出してほしかったのか!?あの行動はあきらかに誘惑しているのは間違いない。しかし、絵美にはまだ彼氏がいるのにどうして!?私は今までの出来事を考えてみるとある結論にたどりついた。これで絵美の行動のつじつまが合う・・・「でも絵美、それは間違ってる」と心の中で呟いた。
■ 告白
いつものように私の家に来た絵美。今日も絵美はインターネットで何かを検索していた。私と何気ない日常会話をするが距離が近いのは相変わらずだった。気が付くと2時間は経っていただろう。しばらくして突然「アタシって魅力ないのかな?」と絵美が問いかけてきた。私は「魅力あると思うよ。絵美は可愛いと思うし・・・」と答えた。すると絵美が私に接近してきた。また抱きついてくるのかと思ったら正面を向いて私の膝の上に座ってきた。両手を私の首に回して「本当にそう思う?」と私の目を見つめながら問いかける。私は「うん・・・」とうなずいた。この状況は非常にまずいが振り払うことはできない。このまま絵美を押し倒してもうどうにでもできるが、それだけは絶対にやってはいけないと心に決めている。しかし私も男なので理性を失ってしまうかもしれない。でもダメなんだと自分に言い聞かせ続ける。そんな状況の中、沈黙が続いていたのだが、私は「もうこんな時間だし、そろそろ今日は終わりにしようか」と話を切り出した。絵美は「わかった」といって私の膝から離れた。
22時を過ぎていたので、私は絵美の家まで車で送っていくことにした。5分くらい車を走らせると突然絵美が「今日は帰りたくない」と言い出した。私は「どうして?」と聞いてみると「今夜は先輩と一緒にいたい」と言った。どう答えていいかわからない。少し黙り込んだ私に「アタシ達、先輩後輩の関係以上にならない?」と言ってきた。その関係って恋人ってことなのか!?そう感じた私は「今の彼氏のこと、どうするつもり?」と聞いてみた。すると「彼氏とは終わらせるよ」という絵美。絵美と付き合うのはいいと思っているけど、それは今の彼氏と終わった後じゃないとダメなんだと私は考えていた。そして「そういうことなら考えるよ」と答えた。
少し間があいて「今から先輩と二人きりになれる場所に行ってほしい。どこでもいい」と言う絵美。そんな場所といえばラブホテルしか思いつかないが、そこに行ってしまうと”絶対に手を出さない”という私の決断を破ってしまうことになる。少し考えた私は「一旦、家に戻ろうか?」と言った。絵美は「うん」とうなずいた。
それから絵美を連れて自宅に戻った。30分くらい沈黙がつづくと突然「さっきの話だけど、やっぱ、もう少し考えさせてもらってもいい?」と絵美が言った。「どうして?」と私が問いかけると「アタシだって簡単に決めれない!」と強い口調で言ってきた。それを聞いた私は「ふぅ・・・」とため息をついた。そして「絵美、もう猿芝居は終わりにしてほしい」と言った。
■ 激白
私の猿芝居という言葉に「どういうこと?」と不思議そうな表情で質問する絵美。私は「俺を利用して彼氏との関係にふんぎりをつけるのは終わりにしてほしいってことだよ」と言った。それを聞いて「そんなことは・・・」と動揺しながら答える絵美。「絵美はいつもイエスかノーかハッキリしないことに悩む癖がある。四年も付き合った彼氏との関係を終わせるのにふんぎりがつかない。でも今の絵美の気持ちは俺に向いている。だから俺を振り向かせるためにいろんなことをしてみたけど、結局、俺の気持ちが今でもわからない。それでも、俺との関係に既成事実(恋愛関係)があれば、彼氏と終わらせる”ふんぎりがつく”そう思ってるんだよね?」と私は言った。動揺が続きながら「いつから気づいてたの?」と絵美が問いかけてきた。そして私はこう言った。
「彼氏と会うって話をした時からかな。あの時、絵美は彼氏のことばかり話してた。なんで俺にそんな話をするのか、そんな質問をするのか疑問になってたのもあるけど、あの話(彼氏)には違和感があったんだよ。ただ、彼氏のことを説明しているだけで、無理に彼氏の話をしているようにしか感じなかった。あれって俺を嫉妬させたかっただけだよね?それと意味不明の音信不通のこと。『忙しいから』と電話をきって、次の日、俺が電話をかけても出なかった。俺が電話をしたらいつもかけ直してきたのにおかしいと思ったんだけど、数日後に俺が何のアクションも起こさなかったことに焦った絵美は俺に電話してきた。そして、何もなかったかのように話した。それは俺との距離を置くことと、俺を不安にさせたかった、いわゆる恋愛の駆け引きってやつかな。まあ、危うく俺もその手に引っかかりそうだったけど、何か事情があるんだなって思ったから連絡しなかっただけなんだけどね。そこまでやっても俺の態度に変化がないので最後の手段に出るしかなかった。それが既成事実を作ることだった。俺の隣で寝てみたり、突然抱きついてきたり、最後には意表をつくキスまでしてきた。でも俺はどんな状況でも絶対に絵美には手を出さないと心に決めていたから、何もしなかった。打つ手がなくなった絵美はさっきの告白をした。それが俺の見解だけど、どこか間違ってるところあるかな?」
私の話を聞いた絵美は突然涙を流しながら「先輩、酷いよ・・・わかってたなんて・・・」と呟いた。少しだけ沈黙が続く。そして絵美は「これじゃあ、まるでアタシは先輩に操られていたみたいだよ」と言った。でも実際に酷いのも、操ろうとしてのも絵美のほうではないか。操ろうとした人に逆に操られていたのは無様かもしれないが、私は絵美を操っていたつもりはない。ただ、私は少し捻くれた人間だっただけだから。
■ 覚悟と決心
涙を流す絵美に「俺は一度だけチャンスをあげた。さっきの告白で『そういうことなら考える』って言ったよね。でも、絵美はそれでもまだ考えさせてほしいと言った。もし、俺と関係を結んだとして、それでも今の彼氏との関係に”ふんぎり”がつけられなかったらどういうことになると思う?」と質問してみた。絵美は「それは・・・わからない」と答えた。それに対して私は「そうなると今よりもっと悩み苦しむことになるのは絵美だよ。それに彼氏がこのことを知ったらどうなるかわからないけど、多少なりとも傷つく。傷つくのは俺も含めてだけど。そんな結末になったら、3人とも不幸になるだけだと思う」と言った。絵美は涙を流しながら黙り込んだ。私は「絵美は今の彼氏との関係を終わらせないといけないと思ってるんだよね。でも四年も付き合っていれば情も深いだろうし、ふんぎりもつけにくいのはわかる。でも、終わってると思ってる関係をいつまでも続けるのは、絵美にとっても彼氏にとっても、それはもう無駄な時間でしかないと思う。絵美自身が情を捨てる覚悟をして決心するしかないんだよ」と説教気味に言ってみた。絵美は「わかった・・・」と呟いた。私は「俺との関係はそれが終わってから考えればいい」と言った。「先輩は、私のこと好き?」「好きになりかけてるってのが本音かな」「そっか・・・」これで会話が止まった。その日の別れ際、絵美は「ちょっと頭の中を整理して考えてみる」と言って去って行った。その後、しばらくの間、絵美から連絡はこなくなった。絵美が今の彼氏との関係を終わらせるには、まだ少し考える時間が必要なんだろう。気長に待つとするか・・・
それから3週間ほど経ったある日、絵美から突然電話がかかってきた。話を聞いてみるとついに彼氏と別れたらしい。私は「よくがんばったね」と言うと絵美は「もう悩んで無駄な時間は過ごしたくないから」と言った。しかし、彼氏と別れたからといって私はすぐに絵美と付き合おうとは思わなかった。たとえ別れたとしても絵美の中では彼氏への情がまだ残っている。それが完全に消え去るまでには時間がかかる。それに私はまだ本気で絵美を好きになっていない中途半端な気持ちだから。今後、どうなっていくかわからないけど、縁があれば結ばれる日がくるだろうと思った。