このストーリーは80%くらい実話ですが、登場人物名などは仮名(架空)であり、実在のものとは関係ありません。
私は手に入りにくそうな女性(人気のあるモテる女性)を見ると、何故か振り向かせてみたくなる変な癖があった。相手に恋人がいようが関係なかった。最初はそれなりの恋愛感情だったのが、手に入るとわかればどうでもよくなる。これから登場する4名の女性に対してしたことは、今考えると人としてどうかと思う。しかし私の恋愛記録の一つであるので書き記しておくことにする。
女性を振り向かせるには優しく接したり、褒めたりする方法がある。その女性が身に着けているアクセサリーや服を「可愛い」、「よく似合ってる」などと褒めることも方法の一つだ。しかし手に入りにくそうな人気のあるモテる女性にそういう方法はあまり効果がないことがわかっていた。普段から周りにチヤホヤされていて慣れているからだ。そういう女性には話を聞いたり相談に乗ったりして精神的に依存させ、私がいないとどうにもならないくらいまで持っていく方法が効果的だったと思う。私の場合は褒める方法よりむしろ精神的に依存させていくやり方が性に合っていた。しかしその方法は短期間でタイミングが勝負なのだ。
里中慶子は同じ学校の二つ年下の後輩だった。最初に出会った頃は可愛いという感情でしかなかったが、二人で話をする機会が増えて、次第に私の心は真剣になっていった。慶子にはもちろん彼氏がいたが、私が話を聞いていると彼氏との関係はマンネリ化どころかほぼ終わっていた。私が本気になりだしたのはそういうことがわかってからだった。まず私は慶子をどう持っていくかシュミレーションしてみた。親身になって話を聴き、相談に乗るがアドバイスは極力しないこと、相手が振り向くまで絶対に手を出さないこと。自分の話をしたがる慶子は私にとって格好の相手だった。慶子が自分のダメなところを話すと、私はその短所を長所に変えて(例えば人に甘すぎるという短所を人に優しいという長所にする)答える。慶子が彼氏との関係を相談すると、否定はせず肯定的に答えるが、時々ため息をついたりする。慶子が嬉しかったことやアクティブな話をすると、その話を受け入れて共感する。慶子が私との関係について友達というキーワードを言った場合は、少し冷たくしてみる。そういうことを繰り返しているうちに、毎晩、慶子から電話がかかってくるようになった。もはや慶子の話を聴く人、淋しさを紛らわせてくれる人は私をおいて他にはいないのだ。ここがタイミングだと感じた私は少しの間、冷たい態度をとることにした。電話がかかってきても「今は忙しい」と言って電話を切ったり、慶子の話を聴いて相槌を打つ程度。すると慶子は「最近、冷たい気がする」と言ってきた。これがまさに私の思う壺だった。冷たいと言われたら優しくするが、また少し冷たくしてみたりする。そして慶子がもう私なしではどうにもならない状態だと確信した時、私は「慶子との関係って友達なのか」と質問してみた。すると慶子は「うーん」と言って少し黙り込んだので、その日はそれで電話を切った。あと一押しといったところだ。ちょうどその頃、他の女性から相談を受けていたので、慶子にそのことを話してみると不機嫌になったのだ。これは他の女性の相談を受けているというキーワードで慶子を嫉妬させる目的だったが、まさに的中したのだ。数日後、慶子と二人で会って話をしているとき、いきなり慶子が抱きついてきたのだ。そして「友達以上の関係になってもいいよ」と言ってきた。ついに私の目標が達成された瞬間であった。しかし、同時に私の熱は急激に冷めていく。そう、手に入ったものには興味がないという子供心のように。その後、慶子と付き合うことはなく、しだいに離れていくようになった。
西村早緒莉は私の会社の同僚で三つ下の後輩で隣の席だった。少し天然が入った早緒莉は人の誘いに断れないタイプだったが、キュートで一部の男性社員に人気があった。私はその天然さとキュートな早緒莉に惹かれていった。人の誘いを断れないタイプということは、ひっぱっていく必要があると感じた私は毎日のように昼食に誘うことにした。勤務時間はときどきからかったりってしていたが、二人になった時は早緒莉の話を真剣に聴くようにした。そうしているうちに早緒莉のことがよくわかってきた。過度の淋しがり屋であること、マンネリ化した彼氏がいること、普段大人しい性格だが自分の話をしだすと夢中になること。私は話を聴いたり相談に乗ることばかりでなくマメになることも決めた。早緒莉が仕事で困っている時は助けてあげたり、時々身に着けているアクセサリーを「可愛い」、「よく似合っている」と言ってみたり、元気のない日に優しく声をかけたり。そうしているうちに、早緒莉と会話をする時の距離が近くなっていることがわかった。そして当時、仲がよかった会社の同僚の日高亮には、早緒莉に気があることを話して協力してもらうことにした。ある日、勤務時間が終わったら日高亮と3人でドライブに行かないかと早緒莉を誘うことにした。早緒莉は断ることなくドライブに行くことになった。私は都会でありながらも星がよく見える場所を知っていたので、そこに連れていくことにした。その場所は山の中腹あたりで街灯がなく、ちょっとした丘になっているところだった。日高亮は私に気を使ったのか「寒いから車の中にいる」といって、私と早緒莉の二人で星空を眺めることになった。しばらくするとなんと早緒莉が私の肩に寄り添ってきたのだ。これはもう何をしてもいいというサインと感じた私は、そっと早緒莉の肩を抱いてみた。早緒莉の鼓動がここまで聞こえてくる。もう恋人同士でしかないこの状況は私にとって喜びの頂点に達していた。そして私は早緒莉に口づけを交わした。もうどうにでもなる状態であったが、私は早緒莉と付き合おうとはしなかった。同じ会社の人間という理由もあったが、口づけの一件以来、どうにも熱が冷めたからだった。
宮島遥香はもともと音楽サークルのチャットで知り合った五つ年下で群馬県に住む女性だった。家も遠いのでメールのやりとりとチャットでの会話だけの関係だった。ある日、私が用事で群馬県に行った時、初めて遥香と会うことになった。遥香は少しぽっちゃり系だが目がクリッとしていて可愛らしい感じであった。ただ、ネガティブ思考で悩み多き女性だった。私は初めてあったその日に遥香の可愛らしさとネガティブさに惹かれていった。その後、群馬県で宿泊したホテルで遥香をどう持っていこうか考えてみた。話してみたところ遥香には最初から「好き」と伝えて意識させたあと、いつものように悩み相談に乗り、ときどき「可愛い」と褒めていくという方法が私の直感だった。この直感に根拠がないわけではない。おそらく遥香はあまり人に「好き」と言われたことがないのではないかと思ったからだ。大阪に戻ってから数日後、遥香に電話をした。そして一目惚れをしたことを伝えると、遥香は少し嬉しそうだけど困った感じで「ありがとう」と答えた。この困った感じだったのは遥香には彼氏がいたからだ。しかし、私はそんなことにはお構いなかった。別に付き合ってほしいと言ってるわけではないし、ただ一目惚れをしただけということを伝えただけなのだ。それにここで付き合ってほしいと言ったところでフラれるのは間違いない。目的は遥香に私を意識をさせることにあったからだ。その後、私は予定通り遥香の親身になって話を聴いたり相談に乗ったりしていた。もちろん、ときどき「可愛い」などという誉め言葉を含めながら。そのうち遥香のほうから頻繁に電話してくるようになった。特に彼氏との関係の相談ばかりだったが、弱音を吐くことが多い。ある日、私はいい加減面倒になってきたのか「彼氏との関係をハッキリさせてこっちに来るのをじっと待っている」と言った。これは賭けではなく、気持ちが揺れている遥香に渇を入れたのだ。そして毎日のように電話してくる理由は何なのかもハッキリさせるようにと言った。それを聞いた遥香は「うーん」と言葉を濁し途方に暮れていたのは明白だった。あと一歩、引っ張ればいいというところで私は面倒になり終止符を打ったのかもしれない。その後、遥香からの連絡は来なくなった。
沢井麻美は会社の同僚で三つ年下の女性だった。少し大人しい感じの雰囲気と目がクリッとしていて小柄で可愛らしく、かなり男性に人気がありモテるタイプだった。同僚の男性社員の過半数が彼女に好意を持っていたようだ。麻美に優しく接してみたり、楽しい話題で盛り上げようとしたり、ちょっと褒めてみたりする男性社員を見ていると、ちょっと面白かった。これほど人気のある麻美に興味を持ちはじめ、どうしても自分に振り向かせる方法はないのかと考え始めた。そう、また私の悪い癖が始まったのだ。まず、彼女に好意を持っている男性社員達の渦の中に入り、その核心部というべき中心へ行くのが最初の目標になった。麻美とはあまり話したことはなかったが、仕事のことで話があるといって2度ほど呼び出すことができた。その後、仕事中に時々チャットで会話するようになり、ついには電話番号まで教えてもらった。これで初期の準備は整ったのだ。次はどう持っていくかが問題だった。私はこれまで麻美と話をしてきて大きなことに気が付いていた。表面上は温厚で優しい麻美だが、それは仮面であるということだ。おそらく本心は違う。そう思った私は早速、電話で「麻美はこういう感じだ」とか「本当はこうなんだろう」などと本心に迫っていく話をしていった。麻美は「なんでわかるの?」の連呼が続いていたことは今でも記憶にある。私の睨んだ通り仮面をかぶっていたのだ。仮面を徐々に外していくと同時に私の前では本音を話していく麻美。ここでいろんなことがわかってきた。麻美の性格は表面上とは違ってドライで白黒ハッキリしている。わがままで淋しがり屋、彼氏もいるようだがほとんど会っていないようだった。私は本音で話す麻美の話を親身になって聴いていた。おそらく本音で話せる人間は私をおいて他にはいなかったのであろう。私の経験上、本音で話せる人間というのは貴重ですがってしまう傾向にあるようだ。そして毎晩のように麻美からメールや電話が来るようになった。この状態まで持ってきた私はついに渦の中心に辿り着いたと確信した。あとは麻美を自分に振り向かせる方法のみとなった。その後も麻美の話を聴いたり相談に乗ったりする日々が続く。そんなある日、私はタイミングを見計らって「悩み事の相談は彼氏が受けるべきだ」、「これ以上は知らない」と言った。これは彼氏の前でさえ本音で話をしていなかった麻美にパンチを入れたような発言だった。少し間があいて「そうだね」と答えたが、これ以上会話が続かなかった。その後も毎晩のように電話やメールが続いた。そして、ついに麻美から「いつも相談しているお礼に手料理を御馳走したいから家に来てほしい」との誘いを受けた。もちろん彼女は一人暮らしだ。私は麻美の家にお邪魔して自慢の手料理とお酒をいただいた。そして「今日はずっといてほしい」という麻美。私はついにこの日を迎えることになったのだと確信した。その後、麻美とは体の関係にまで発展した。その日以来、私は満足したのか麻美に対する熱が冷めてくる。そして電話やメールの回数が徐々に減っていった。二人の関係は自然消滅していくことになった。
私がこれまでしてきたことで、周囲からは悪魔のようなことをすると批判を浴びることになる。時に母親からは女性の気持ちをもてあそんで楽しむなと怒られたりもした。たしかに精神的に依存させるだけさせておいて、満足したらハサミでバッサリ切るかのように離れていく。残された彼女達にとってたまらないことだったのかもしれない。親身になって話を聴いたり相談に乗ることは悪いことではないが、彼女達の精神的な部分を最後まで責任を持って背負うべきだったと思う。満足したから途中で投げ出すのは無責任と言えるだろう。